ハイヒールが揺れている。同じ種族の女の少し大きいサイズの靴が、無理におしこめた足をあざ笑うように、間抜けに宙で揺れている。
「あ、っぁ、あ……」
そこから生えている貧相な脚も、腿のなかほどまでを覆うやわらかい布に覆われて、しとどに汗を含み、ときおり痙攣する肉の影をあらわに光らせた。それがあんまりにも安っぽく見えて、みじめになって思わず目をつむると、つと、脚を抱え上げた男の指が布と皮膚のあい間に侵入する。それがたくらみあってのものなのか、獣性のいきおいあまってのことであるのか、フィニにはもうわからなかった。
「ひぅ、う、っんん……ッ」
上等の仕立ての黒い下着はわずかにずらされたまま、あやすように陰茎の先端だけを抜き差しされる穴が、男の肉にすがりつくようにちゅぷちゅぷと音を立てて顔が熱くなる。たまらず目を開けると、脱ぎ捨てられたドレスが視界の端にちらと見える。夫を亡くした婦人のものだと言っていた。黒いから、きっと旦那が死んで一年も経っていないんだろう、とフィニは思った。中身の女がどうされたのか、どうなったのかはどうでもよかった。似合わぬそれを装わされ、酒と煙草の悪臭がはびこる部屋で初夜の少女のように振舞わされ、飽かれ、いつもの獣めいた暴力を啜るのがいちばんよかった。
イシュガルドの夜をたっぷり含んだ空が分厚い雲と雪に乱反射して、蕩けたフィニの目にぼんやりと映った。ぬるい快楽を貪り、思考と眠気のはざまで夢を見る。 フィニのものとは似ても似つかない、雲霧街の冷たい石造のようないろをした指が、大きく開かされた足をゆるゆると撫でた。ぞわ、と性感がのぼって、背を反り思わず指を噛んだ。
「ん、んーー……っ」
男が喉で笑うのが聞こえた。豪奢でどこか虚飾のある服を着たまま少年を犯している男の緑いろの目が、窓の外にふり落ちる雪あかりばかりが照らす薄暗いさなかに、ほのかに見えた。
エマ、と心臓が囁いた。エマニュエル。大きなエレゼンの男だった。フィニはこの先もっと背丈が伸びたとしてもこの男のようになれるとはとうてい思えなかった。
朝の新雪に踏み入り、にじるような、男の無機質な呼吸がわずかに乱れた。——フィニはもう息の仕方を覚えていられなかったのに。とつとつと内臓を押し上げる動きが早くなる。頬が熱く火照る。フィニは息をこぼしながら下着の中の自らの陰茎に手を伸ばし、拙い動きで扱き上げた。やがて寝台の軋む音が止み、ぬるい熱が不意に胎の中を満たした。
「は、あ、ぁあ……」
「…………」
ズッと水気を引いて陰茎が抜かれると、足りないといわんばかり穴が収縮して、フィニの顔が真っ赤に染まった。そうした純潔的な恥じらいとは裏腹に、下着の内側では幼い茎がとっくに果てていた。
フィニの呼吸が戻るまでのあいま、大人の男の指がとろけた穴を引き伸ばして、面白半分に広げたり抜き差ししたりした。白濁に濡れた縁がちくちくと音を立て、フィニはふたたび与えられる火種に目を閉じてしまいたいのをこらえて、エマニュエルを見上げた。
「ん…っ、エマ、っ……きょう、は、これで終わり、ですか?」
「んー?」
エマニュエルはフィニに問いかけられるや否や、何もかもから興味を失ったように気怠げに寝台から降りて立ち上がった。フィニは窓辺へ向かうエマニュエルの背中をじっと見送った。男が倦んだしるべである燐寸の擦られる乾いた音と、煙草の濃いにおいがただようのは、ほとんど同時だった。
フィニは、ほっ、と息をついた。おそるおそる腹を手のひらでたしかめると、めずらしく空腹の気配がする。まだ深更には遠く、雲霧にひたる人々がうごめく街の胎動に耳をやりながら、彼はエマニュエルの種を食んだ下腹をそっと撫で、今しがた閨を去った男の方をちらと見た。エマニュエルはすでに服を元に戻して壁にもたれていた。彼は窓の外を興味のなさそうに眺めやり続けている。
フィニはのろのろと起き上がると、華奢な靴と長靴下を早く脱いでしまうために、ベッドの上に座ったまま身をかがめた。エマニュエルの結んだリボンは足の甲でするりと解けて、日に焼けていない裸の足があらわになった。ゴトリと音を立てて靴を床に落としたフィニは、長靴下を引き下ろすがままに輪のようにして脱ぐと、ぱちぱち小さくまばたきをして、少し躊躇ってから、次に薄い下着に両手をかけた。膝を引き寄せ、両の親指を引っかけて脚をくぐらせると、白い精液がか細い刺繍のしたためられた黒い下着に二本糸を引いた。そうしてみるといたたまれなくなって、それも指でつまみそそくさとベッドの下に落とした。
「えらく急ぐな」
と、突然エマニュエルが口を開いた。フィニは声の方に顔を向けた。が、男はフィニを一瞥もしないまま灰を落としてはつまらなそうに煙草をのんでいた。
フィニは今夜約束をしていた。彼の支配者であり、枷であり、なかば僭主である男の預かり知らぬ、無邪気な口約束だった。
「ん、と……飯、誘われてんです。ほら、三番路地の薪売りの奴に……」と、フィニは情交の熱が残るままの頬をかすかに綻ばせてころころと言いながら、床に落とされていたシャツを緩慢な仕草で拾い上げた。「最下層に新しくできた店のビーンスープがうまいんだって。チャイ? もあるらしくって」
チャイって俺知らないんですけど。とフィニはシャツを手すさびしながら言い続けた。知らず、頬が期待のうちにゆるむと、薄い皮膚に彩られた彼の顔はひどく幼くなった。柔らかくしなびた性器の逐情の痕跡と、座り込んだ足の間でいまだひらいている穴のうちに残されたままの男の精がなければ、菓子を与えられた上層の子供のような表情だった。
「で?」
「待ち合わせ。間に合いそう、だから……」
と、フィニの声が頼りなく震えた。 エマニュエルは何も言わなかった。ただふーっと吐いた息に紫煙が長く伸びる。その様子に少年は肩をあわれげに丸めた。少年は、なんだか早くここを去らねばならないような気がして、男から顔を背けて、もつれるシャツのボタンにおぼつかぬ仕草で指をかけた。
石の床を、質量のこもった足音が近づいてくる気配がした。ああ、と少年は顔を上げた。色の薄い瞳が怯えをふくんで素早く動いた。
男の大きな手がずいと目の前に伸びて、荒々しくフィニの顔を掴んだ。
「ひ」
「お前は本ッ当に物覚えが悪いよな、なあ?フィニ」
どこか不思議な熱を帯びた不気味さが、エマニュエルの眼のうちに雷光のように駆けた、ような気がした。フィニにはそれを見ることができた。でも、それが何を意味するのか知ったときにはいつだってもう手遅れだった。
(また、まちがえた?)
「え、エマ……」
黒黒とした薄氷のような夜の瞳孔が、雪の大波のような残忍が、シェーダーの男のかたちをともなって、軸軸と滲み出る擦り傷のように不熟のからだをおし包んでくる。
男の手が慣れた手つきで愚かな少年の首を撫でるようにおさえた。節の太い指に圧される頸が、だくだくとした脈に支配をあけ渡し、空気の行き渡らずに収縮する肋が致死の恍惚を与えられたかのように錯誤する気配がして、フィニの瞳はうっとりと湿りを帯びた。 本当に馬鹿で可愛いよ。低い声が奇妙に心地よく少年の脳裏を揺さぶった。頭がぼうっとして、両手がだらりとからだの横で揺れるばかり、掴み上げられた少年の朧なまなざしは、男の右目に這う茨の蔦のような刺青をじっと見ていた。
———
「んぶっ、ん、んぅう!っ、んん、っっ……!ぐ、おぇ、」
「ほら、もっと喉で飲むんだよ」
男の肉を喉奥まで打ち込まれ、寝台に押しつけられた少年の足が、シーツを引き裂くように動物的な足掻きをした。足の指がバラバラに暴れ、息苦しさのために恥じらいのなく開かれた足の間では、余韻のまま柔らかい穴がぱくぱくと痙攣して、逆流した子種がぴゅ、ぴゅ、と少量ずつ吐き出されていた。
髪の毛を掴み上げられた痛みからか、悲鳴を揚げるたびに苛まれる呼吸の不義理からか、薄い透明な肌を赤く染めて、胸に乗りあげる凄まじい重みの圧迫を受けながら男の足を懸命に掴むと、叱られるように頭を乱暴に前後させられる。エマニュエルはたびたびこうして、まるで物であるかのようにフィニを扱い、そうなってしまうとからだの細い少年は、我慢やあきらめという領域ですらなく、ただひたすらに男の暴虐にたえることだけを考えるようになる。そして、時おりその理性の光すら厭うた男によって、捨て鉢の快楽が十五の生身にいやおうなく注がれた。
「ぅ、っく、う゛ぅ、ううう」
「……いつまで経っても上手くなりやしない」
やがて、エマニュエルはどこか飽いたように気怠げに首を傾いだ。彼はことさら荒っぽい仕草で少年の喉から陰茎を取り出した。
「か、はっ…!げほ、ゲホッ…!ぇ、ま、エマ……ぁ」
むせてからだを丸めたフィニの小さな口から透明の液体がぼとぼとと落ちた。エマニュエルはシーツを掻いて後ずさるフィニを軽い力で抑えながら、足首をたやすく掴んで広げた。
「あ、あ、……」
「てめえも汚ねえミストのガキどもと同じか? ちっとは利口だと思ったんだがな。お前は男咥えて腹いっぱいにしてるのが似合いなんだよ」
「ゃ、待って、あ、ぁ…!」
穴からこぼれ落ちる白い精液を長い指で優しげに押し戻し、子どもの黒髪を梳く手を、恐れているのはまるで少年一人ばかりなのだと思い知らせるようにして、エマニュエルはたおやかに笑うと、怯え縮こまった穴を穿ち、まだ開ききっていなかった腸壁を一気に破り開いた。
「ひぁ゙ッ、!?あ、あう、ううーーっ!」
苦痛にフィニの足ががたがたと震える。男はそれをものともせずに抑え、掴み上げた膝裏をさらに広げて寝台に押しつけ、蛙のような格好にした少年を組み敷いた。フィニは青褪めてエマニュエルの顔をうかがったが、うすらと笑んだ表情は変わらず、色はようとして知れなかった。
ぐ、とさらに押し入る雄の衝撃をシーツを掴み喉をそらせて逃すことしかできない少年の瞳に、エマニュエルの穏やかな声音が膜を張った。
「あ、あーーっ……!!」
「ああ、それとも自覚してたのか? なんせ『最下層』の『ビーンスープ』はうまそうだもんなあ」
「ぁ、あ……ごめんな、さ……」
「で?薪売りのガキがどうしたって?」
「あい、つ、は、ぁひい゛っ!あ゛、う゛ぅ」
フィニが口を開こうとすれば、ズンッと太い肉の塊が腹の奥に突き刺さり、何も言わせてもらえない。はふ、と舌だけが犬のように飛び出るばかりで、エマは怒っているのだと、その事実だけがフィニのやわらかな肌を引き裂いてとうめいな汗を散り散りに流した。 男はしばらくそうして少年を嘲弄していたが、やがて哀れみのような侮りを目にたたえ、こともなげに少年のからだを折りたたみ、まるでフィニがただ包丁で野菜を切るときにするみたいに軽い調子でとん、とんとのしかかった。
「あ、あっ、あ、ん、っ……ふか、い……ッ!ひぐっ、う゛ぅううぅ…!ぇあ、やだ、やめ、て、エマ、」
フィニはシーツを握ることすらできず、そうすればこの苛みから逃れられると愚かにも信じているかのように、自身の顔を赤くなった手で覆った。か細い声が、やだ、やだと幾度も繰り返すのを聞いて、エマニュエルの動きが止まった。フィニは喉をひくりとしゃくり上げて、指の間から大きな男の影を見上げた。表情の変わらない緑色の瞳が、霧の街に相応しくなく、燃え上がる炎よりも高い熱を持ってフィニの心臓を冷ややかに見定めてくる。
やめてくれるの、と口を開きかけたとたん、ぬぢ、と閉じた弁を強引にくぐり抜けた太い肉が最奥を突き抜けて内臓をぐっぷりと広げ、狭い腑を真っ直ぐにした。
「や、あ゛ッ……!いや、あああっ!う、あ゛〜〜〜ッ!」
見開いた青い目から涙が飛び散った。衝撃に跳ねた腕が寝台を強く叩いた。はくはくと唇が動き、舌を突き出しこれ以上ないほどに背を大きく仰けぞらせ、からだじゅうすべての神経が留められてしまったかのように、少年の痩せた幼弱の肢体が艶やかに踊った。
「いた、痛い、エマ、ぁ…いたい……!」
「はは、膣みてえだな。孕むか?このまま」
「は、はひッ…やめ、や゛めて、くらしゃ…も、ゆ゛るひてぇ…やだ、やぁ…ッ!」
ちつってなに、そんな馬鹿げた疑問がフィニの頭を一瞬だけよぎった。
エマニュエルの冷たい体温がフィニの汗で濡れた前髪をかき分けて、低い息が小さな耳殻をひどくくすぐる。きゅっと腹の底が怯えすくむ声に、フィニは思わず男の太い肩に手を伸ばしすがり付いた。
腹がエマニュエルの形に膨らみ、平らになり、また膨らむ。それだけのことなのに、”はらむ”という音を紡がれるのは恐ろしかった。言葉の意味はわからなかったけれども、エマは俺に取り返しのつかないことをしようとしているのだと、その野生じみた直感に、快楽に混じった慄然が少年の脊髄を何度ものぼせ上がって、涙が止まらない。
「くるひ、ぃ、くるひい、よぉ…ッ」
「てめえで締めてるくせに喚いてんじゃねえぞ」
「やぁ、エマ、エマぁ……!」
エマニュエルの微かな舌打ちが聞こえ、絡んだ腕を荒々しく引き剥がされた。離れた体温にわずかフィニの瞳に微かなかがやきが戻るが、それもからだをうつ伏せに覆されてすぐになくなった。
大きな手に首を掴まれシーツに押し付けられながら、広がりきった腸壁を何度も舐め上げられてそこをこじ開けようとされるたびに、目の裏に白い雷が走った。ガクガクと痙攣する腰を恐ろしい力で抑えこまれると逃げ場のなくなった絶頂が腹の底でうねり続け、フィニはいよいよ引きさかんばかりにシーツにしがみつき泣き叫んだ。
「あ゛っあっアッ、ぁあ゛はッ…!ぅあアッ、あ゛ッ…!ひぃいッ、ぃ゛アッ!あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ ァ゛!!!」
「もっと可愛らしく哭いてみろって。わかるだろ?上層の女みたいによ」
甘い声がフィニの耳元に囁いた。男が少年の腰を引き、尻を高く上げさせると、深みをねぶる熱さに少年の足が咄嗟に男を拒絶する。まるで狂児の振る舞いで、フィニは額をシーツに擦りつけながら獣のように呻いた。すると、仕置きとばかりにエマニュエルの長い指が穴の淵を引っ掛けた。広げられた穴に更なる凌辱の気配を感じ、フィニは激しく首を振った。
「まっ、てえ、ああ、いや、やぁ…っ!やだやだ、や、ら゙ァァ゙…!」
「やだやだって、すっかりガキだな」
「そこはもう、いや、たすけ、エマ、エマ……」
ふふ、と優しげな嘲笑とともに凶悪な律動が止まり、先端が穴の淵まで引き抜かれた。 大きな手が頭をくしゃりと撫でて、フィニが安心してため息をついた瞬間、ぼぢゅ、と腹の底に太い肉が穿たれる。ごりごりと中をかき回されて、目がぐるりと上を向く。絶えずばたばたと足掻いていた両足がピンッと突っ張って動けなくなる。
「おぉ゛、ッあ…… お゛ッ……」
「誰に言ってんだよ」
せせら笑う声が真っ白な視界の中に飛んだ。すでにエマニュエルのことを感じられなくなるところまで、楔が打ち込まれていた。がくりと身体全体から意識が失われ、頭をシーツに突っ伏したまま、断続的に腰がビクビクと跳ね上がる。陰茎からしとどに落ちてシーツをひたすものが精液なのか尿なのかもわからなかった。焦点をなくした眼からはたえず涙が流れていた。
「おっと」と、エマニュエルは気をやったフィニの腹を押さえて、片手で中身を揺さぶるようになぜて耳元へ囁いた。「起きろよフィニ。俺はまだイってないんだ」
「ぅ、あ……っ」
敏感な耳に直接吹きこまれる低音の震えに少年の身体がふるりと揺るいだ。覚醒した淡い瞳はどろどろに溶けて涙に融解し、巨大な上半身を倒されたことで腹の中身がうねり形を変えて泣きどころをつぶされると、押し出されるようにしてはたはたこぼれた。
男はしばらく指先で少年の醜く歪んだ下腹のかたちを確かめるようにあやしていたが、少年がいよいようつつに帰り自身のおかれた境遇を見つめ青ざめるやいなや、まだ細い身体を持ち上げて、寝台の頭に身を預けると膝の上に座らせるようにして自身の体の上にのせた。
「ぇあ……っひ、ぎゅ、ぁう゛ぅ」
陰茎に差し貫かれたままの横暴に、水浸しになった少年の股ぐらはひどい音を立てた。咽喉がクンと仰け反り、身体はこむら返りのようにかすかに引き攣った。弁から長大な肉がずろと抜かれて、寒気に似たものが背筋を這い上がっていく。
「あっ、あ゛っ、あ゛――」
肺から漏れた高い息が少年の喉を借りて、哀れに嗄れた色声が長くのびた。エマニュエルの肩に預けるようにあおのいた小ぶりの頭に、男の口づけが落ちたが、少年がそれに気づくことはなかった。
ただ一つ少年にわかることは、おそろしい力で腰をつかまれて、好きに身体を揺さぶられ、自身が男の肉柱をしごくだけのものになったのだということだけだった。自力で支えることのできなくなった頭ががくがくと揺れ、涙が瞑目したまつ毛を濡らしながらひっきりなしに流れ落ちてやまなかった。閉じきらない小さな口からは、知らず口淫を望むように赤い舌がのぞいて、秘所を深く押し上げられる都度呼応するように少年の陰茎から精液とも水ともつかないものがわずかばかり飛び出た。それを見たエマニュエルが少年の陰茎を掴み、人差し指で戯れに鈴口を叩くと、濡れそぼって赤く張り詰めた幼い先端からこぷりと薄い精液が垂れ流された。
「あ゛ぁ! あ゛っ」
「っはは、ぶっ壊れてんな」
「ひっ、ア゛…も゛う、やだぁ゛あ゛アッ、イってる、イってゔ、からぁ゙っ、も、止まってぇ……!」
ひどくつぶれた声が絶えずのぼってくる。息ができない、からだぜんぶにエマニュエルを抱かされている、そんな気分になる。身も世もない高い嬌声が彼らの巣に充満していくと、ふたつ合わさった影がひとつの大きな怪物のように見えた。
フィニはまだ子供だった。少なくとも、背丈や頑強さ、声の濃艶は男に遠く及ばなかった。が、その子供の身体は余す所なくつまびらかに、ただのひとつも取りこぼすことなく男の行為に反応した。太い肉を赤くぬめる孔の中に咥え、貫かれながら貪欲にそれを喰む不熟の肢体は男の嗜虐の心に満足を広げた。
エマニュエルは少年を物のように扱い、自身の体の上で上下させながら気まぐれな上機嫌で細い首に唇を与えた。足跡のように散る赤い跡が、ひと続きになって雪の上に引きずる哀れな遭難者のようになる。そうして比べ物にならない体格に押し包まれるように犯されながら、フィニは無垢だった時のことを忘れ、飢えていた時のことを忘れ、ひとだった時のことを忘れた。冷たい石の街のことを忘れた。降りかかる拳のことを忘れた。早くこの熱から逃れたいと、そればかりが幼い思考のすべてを支配した。
「も、出して、出してぇ、エマ、助けて…っァ゛、おく、おねが、っああ、たすけ、てぇっ……」
「は、は……言ってろ」
エマニュエルの腕が膝裏を抱えてこれ以上は開かないというところまでフィニの股を広げ、手首をつかんだ。そうすると、もうほとんど串刺しの磔だった。エマニュエルが掴んだ手首を引けば、硬く直立した性器がぐっぷりと再びフィニの奥底に埋められた。
「~ッぁ゛、んぁ、あ゛ーーーーッ♡♡あ゛ーーー♡♡ 」
まだがんぜない子供とも思えず、フィニは歓喜の声をあげた。貫かれたからだを烈しく痙攣させる少年の陰茎から、ぷし、と透明の液体が放たれた。勢いをなくしても、それはしばらく失禁のようにとぷとぷとシーツに染み込んでいった。
「ぁ、あーー……ぁ……」
薄い腹にねじ込まれた肉のどくどくと収縮する感触と最奥をこじ開けた先に放たれる熱の蹂躙に、はち切れそうな腹を抱えたフィニのからだはぐったりとなった。内臓のいちばん奥に精液を塗りこむようにして熱いものがゆっくりと動くと、そこから高熱が頭のほうまで上ってくるようだった。
それを見て、エマニュエルは鼻歌のような息を吐いて笑った。何度目か、男はこの子供への乱倫は愉快な気を起こさせることに気が付き始めていた。
少年のからだを持ち上げると、蓋をなくした肉の層が、爛れた赤い口から音を立てて止めどなく精液を溢れさせてくる。
汚ねえ音。少年を膝に乗せたエマニュエルが気を良くしていると、雪の音に負けてしまいそうなほど弱々しい声がエマニュエルを呼ぶのが聞こえた。
「抜かな、で…エマ、ぬかないで……」
「どうして?」
と、エマニュエルは少年の頭に頬を擦りつけて言った。少年の目は固く閉じられ、涙にぐっしょりと濡れたまつ毛が震えていた。
「こぼれちゃ、う、から……エマ、の、……はらむ? から……」
「はは、ならいい子になれるか?」
「うん、うん……」
エマニュエルは、熱に浮かされたように意味のない音の羅列を発しながら懸命にうなずくフィニを一瞥して見下ろした。エマニュエルのものとは絶対的に違う白いからだが、これから伸びるべき銀嶺の新樹のような手足が、快楽の名残にしげく痺れて投げ出されている。それを見て、彼はふたたび少年の肌に指を這わせた。
「お前にゃ無理だよ、フィニ」
「あっ、あ、あ…ッ!」
白樺にいざる蛇のようなエマニュエルの手は充血した少年の肉片を探り当て、二本の指でそれをぐぱりと開いた。街路に流れる血溜まりの上を歩くような音が鳴る。前戯のときのように前後する指が壊れた性感を強引に引きずり出し、フィニはからだをよじってエマニュエルにしがみついた。 どうしてそんなことを言うの。いい子になるから、もうやめて、もうやめて——
「——もっと……し、て……エマ、……」
何か約束をしていたような気がする。だが、それは果たして、この美しく太い指に嬲られること、妖花の瞳にあざけられること、そしてひどくあたたかな腕に抱きすくめられることよりもたいせつなことだっただろうか?
ふたたび男を肉のうちに迎え入れながら、少年の意識はうつろの夢を見て、霧にひたる森の中を歩き、唇を赤く引き裂く茨に口づけをした。
ひととき、男の呼吸が止まったような気がした。が、それも一瞬だった。石の箱に二人きりおさまって、くたびれたドレスの死骸と眠ることの愚かさに男が気づいたのかはわからなかった。